𡧃野 湧Uno Yu
Profileプロフィール
ワレモノとしての陶磁に着目し、あえて破損や経年変化を取り入れながら作品を制作する。文化や美術の歴史における保存の在り方を念頭に、ものの存在やものへの触れかた、その遺し方についての新しい視点を提案する。主な発表に2024年企画展「工芸のゆくえ」(工芸青花/東京)、個展「呼び戻されるフレーク」(GALLERY crossing/岐阜)、 TRANSIENT ENCOUNTER(GALLERY crossing/岐阜)、2023年 MIND TRAIL 2023 奥大和 心のなかの美術館(吉野山/奈良)、ARTIST’S FAIR KYOTO 2023(京都新聞社)、2022年 個展「われてもすえに・その後1」(LAD GALLERY/名古屋)、2021年 個展「欠け端のセラミクス」(Alternative space yuge/京都)など。
Statementステイトメント
やきものの制作過程は、素材の性質を変化させる機会に恵まれています。水分を含んだ陶土が乾燥するとき、作品を焼成するとき、釉薬が熱によって変質するときなど、人為的、自然的な過程を経て、残り得るものだけがただ残っていきます。私は、やきものを、時間や工程によって連続的に淘汰された結果として確かに残存している物質だと解釈しています。
また、やきものは、焼成によって頑強さを獲得し、摩耗や風化に耐えることができます。加えて、人々がやきものを残そうと尽力し状態よく保存されたものは、一万年も形を維持できる素質があります。この特徴は、とてつもない未来へ橋を架けられる伸びしろがあると言えます。制作過程による淘汰や自然の風化による淘汰に打ち勝ち、人々の手によって受け継がれてゆき、遠い未来の人々とつながることのできるポテンシャルこそが、材質の表情となってやきものに立ち現れるのだと考えます。
一方で、やきものには「割れ」や「欠け」といった要素もあります。この要素は不可逆的なもので、繕いこそすれ元の状態には戻りません。起こってしまった仕方のない出来事の果てに、やきものは損壊します。こういった要素は確かにやきものの欠点であるとも言えますが、私は一つの魅力として捉えています。
やきものの特徴的な材質である頑強さは永遠を思わせるほどに堅硬ですが、「割れ」や「欠け」という脆弱的な要素を強く押し出し表現に取り込むことで、画面上に浮かび上がるワレモノとしての情景を「確かにここに存在するが、いずれ崩落して無くなってしまうかもしれない有限的なもの」として人々と共有し、同時代を生きる私たちの、ほんの少し先の未来を想像することについて示唆できるのではないかと考えます。押し広げて言えば、ワレモノとしてのやきものを起点とした作品保存を実践することで、ものの残し方における一つの方法を人々と共同して実行できると考えています。