田中藍衣Tanaka Ai

田中藍衣

「回路」
2024年
3200×4100mm
紙に岩絵具、ガラスビーズ
photo:越後妻有里山現代美術館MonET

※画像と出品作品は異なる場合があります

Profileプロフィール

1992年愛知県生まれ。愛知県立芸術大学大学院博士前期課程油画・版画領域修了。主な展覧会に、個展「リバース ストリング」2024年(越後妻有里山現代美術館/新潟)、グループ展「VOCA展2023 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち」2023年(上野の森美術館/東京)、グループ展「バーナムで円を描く」2023年(COCOTO by COCO Gallery/京都)、個展「Got a Light」2022年(SANTOKO GALLERY/長野)、個展「Life」2020年(awai art center/長野)など。2023年に「VOCA展2023 現代美術の展望ー新しい平面作家たち」佳作賞を受賞。

Statementステイトメント

私は、植物の構造や文字などをモチーフに取り入れ、可視化できるほどの大きさの粒子から成る岩絵具を使用し、図示と描画といった似て非なる領域の行き来によって絵画を立ち上げることを試みています。そこには、あらゆる個と個の関係において、括ること、分けること、並べること、重ねることで生まれる意味や視点などの輪郭について疑問を投げかけるといった意図が含まれています。

例えば、アメリカのことわざに「良い隣人は良い垣根を作る」という言葉があります。
このことわざに出てくる垣根は他人に対してのマナーを指していますが、私たちの存在を意味付ける境界のようにも見立てることができます。様々な隣人と日々交わる中で、両者の間に広がる垣根のかたちに合わせながら、常に互いの見え方は多様に変化し続けているようにみえます。

絵画を描く際に用いる絵具も、二つ以上の色を混ぜ合わせることで変化していきます。しかし、粒子の大きい岩絵具では混色されても完全に変化することはなく、混ぜられた絵具は互いに元の色を保ったまま支持体の上で沈黙を続けます。その様子は私と他者が垣根を通して交わり合い変化していく中に、本来の姿のままであり続ける私たちの本質とも言うべきものをみているようでした。

何から何を、何と呼ぶか。この問答を追求する中に、名前のない揺らぎ続けるものが可視化されると考えます。
地上茎と地下茎から成る構造体である中心を持たない植物、線が引かれることで複数の呼び名や意味を持ち始める文字、それぞれの成り立ちと、二次元の中に多義的な表現を可能にする絵画とを重ね合わせることで、何者かであると同時に何者でもない、他者と生きる私たちの姿をそこにみることが可能なのではと感じています。

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