東 智恵Higashi Tomoe
Profileプロフィール
大分を拠点に活動する画家。2019年Bath Spa Universityでファインアート修士課程卒業。植物や女性像、自分自身に焦点を当て、その美化や理想化に対する独自の視点を探求。日本文化や神話の影響があり特に平安時代の襲や文様を用いている。
2024年に個展「東智恵展」福岡女子美術館、2023年に「INVERSE」(べっぷ駅市場) 「Space,」(Space Beppu)2022年に「永遠と刹那と沈黙の蝶」(トキハGallery)「楽園の日々」(冨士屋Gallery)開催。グループ展では、2023年にBeppu Art Fair(大分)、べっぷ駅市場(大分)やアトリエひこ(大阪)などで作品を披露。2022年OPAMでの「現実47」展や東京の3331 ART FAIRに出展。過去にはイギリスのLocksbrookや44ADで展示。
2023年には宮崎総合美術展で入選。受賞歴には生頼範義展での優秀賞や市教育長賞など受賞。
Statementステイトメント
植物、女性像、そして自己に焦点を当て、それらの美化や理想化に対する独自の視点を追求している。現在、絵画だけでなく立体作品により、3つのシリーズに枝分かれしたコンセプトの中で、視覚的手法と哲学的アプローチを通じ、様々な思いや問いを考察し作品化している。
女の子シリーズは、一人の女性をモデルに描いた一連の作品である。アナログとデジタルの双方の制作プロセスを経て生み出されたこれらの作品は、デジタルな手法で描いた元のイメージを、キャンバス上のアナログな手法により複製し続け、増殖するイメージで作られている。このシリーズを特徴は、同じポーズの繰り返しと対照的な、色彩とテクスチャーの変化である。物質化以前の電脳空間の中にのみ存在するイメージを受肉させ現成化し、増殖し続ける作品である。
反転シリーズは、反転するという単純な行為が、果てしない解釈の可能性を広げること。その気づきからこのシリーズは始まった。本来身にまとうはずの着物の柄と背景の花とが反対に描かれているのを特徴とする。女性に纏わりつく柄(この文様は、平安時代に着用された十二単の唐衣(からぎぬ)・表着(うはぎ) で使われている文様が元になっている。)が束縛するものなのか、隠すものなのか。髪は背景に溶け込むことで作品には奥行きを生み出し、身体には不確かさと内外の境界のあいまいさをもたらす。ここから「自己は内面から形成されるのか、外界によって形作られるのか」という問いが生まれる。また、多用される藤の花は、作者自身の幼少期の記憶に根ざした死のイメージを呼び覚ますものでもあるが、人によっては、「不死」をイメージしえる花である。その花が描かれる場所や個人のストーリーによって千差万別の意味や解釈がうまれるだろう。
物語シリーズの、始まりは夏目漱石の『夢十夜』の第一夜。
これらの作品は、輪廻転生の思想への憧れ、しかしそれよりも死をも凌駕する人間の情念への深い興味から生まれた。制作を通して時間とは何か、そして人間の精神とは何かという問いに突き当たり、これらの問題に対して、その答えをを知ることのできない深淵に絶望しつつも、答えに辿り着けるのではないかという小さな呪いのような思いから生み出された。このシリーズは、難解な問いを前にした逡巡の軌跡であり、観る者に思索と夢幻の旅に誘う。