齋藤夏海Saito Natsumi

Profileプロフィール
齋藤 夏海
1999年、青森県生まれ。2024年に広島市立大学芸術学部美術学科油絵専攻を卒業後、2025年より同大学大学院芸術学研究科造形芸術専攻現代表現研究室に在籍。同年、ドイツ・ハノーバー専科大学に交換留学生として留学。
油絵を中心に、テンペラなど古典技法や版画を学び、絵画が技術とともに発展してきた歴史、とりわけ写真技術の出現による絵画の変革に関心を深める。近年は、イメージの需要に着目し、インターネット上を流通する画像や情報、その構造と視覚化されない影響力に焦点を当てながら、デジタルメディアを用いた作品制作を行っている。
個展に「Tale, on_the_Table.」(Hiroshima Drawing Lab/広島/2025年)、「Lento: 小旅行」(ギャラリーG/広島/2023年)。主なグループ展に「Hiroshima - Inside/Outside」(ギャラリーブラック/広島/2025年)、「Idemitsu Art Award展 2024」(国立新美術館/東京/2024年)ほか。2023年に「第44期国際瀧冨士美術賞 優秀賞」を受賞。
Statementステイトメント
現在、私たちは絶え間なく流通する画像やデータ、断片的な物語に囲まれている。それらへのアクセスは極めて容易である一方、得られる情報は脈絡を欠き、瞬間的に消費されるため、リアリティを喪失しがちである。その結果、私たちは見知らぬ土地をさまようような違和感を覚え、意味のつながりを見出すことが困難になっている。
私の制作は、こうした断絶された感覚と、周囲と地続きの関係性を構築することの困難さに根ざしている。とりわけ、生物間に自然に成立する「パーソナルスペース」の概念に着目し、それらを応用することで、生物と無生物との間にも同様に空間的・心理的な距離が存在するのではないかと考えた。その距離を観察し、比喩的に測定することで、私たちが物事をどのように知覚し理解するか、その枠組みを再構築できる可能性を探っている。
その手がかりとして、私は画面をしばしばテーブルに見立てて構築する。テーブルは水平で安定した場として対象を一時的に留め、静止した空間を提供する。その静物画的な特性は主観を抑え、純粋に観察する視点を確保する手助けとなる。この行為は、今日の圧倒的な情報文化を航海するための一つの道標となりうると考えている。